先日クリスマス準備のため、銀座に行った時に思い出した経緯を書いてみます。
最近は毎年クリスマスシーズンくらいでめっきり足を運ばなくなりましたが、高校生の頃、よく行っていた場所は銀座でした。
自分がレッスンを受けたり、演奏指導のお手伝いをする他、楽団のコンサート、コンクールなど、それなりに忙しく走り回っていたこともあって、同級生よりも師匠と遊びに行くことが多かった私。
ある日、師匠から「ルイ・ヴィトンに寄りたいから、ちょっと付き合ってくれない?」と言われて銀座店に行くことになりました。いつも通り落ち着いているけれど、どこか気品をまとった佇まいで入店する師匠の後をついて行くと、商品の購入ではなく、修理がこの日の用事。
修理に出されたのは、どこに行くにも師匠が持ち歩いていた大判スコアを入れた鞄。長年使っている内に、取っ手部分に不具合が出てきたので修理に出す、とのことでした。
「良い物 ―本物― を持っていると、長く使えるのだな」
「年季が入る分、新品も敵わない程の価値が出て、結局はもっと貴重に使われるようになる」
ラグジュアリーブランドがもつ価値通りに、長年使い込んでいく姿が格好良いなと、ものすごく感動したことを覚えています。ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)と言えばモノグラムのトランクケースが有名ですが、師匠が遠い昔、海外で見聞きしたそのトランクにまつわる思い出話はとても興味深くて、いつまでも聞けました。
また、エルメス(HERMES)に立ち寄ったある時のこと。師匠が有名なスカーフを広げて見せてくれて、シルクの美しさやデザインに関すること、発色の特徴など店員さんとの会話を楽しまれながら、何が良いのか、その物の価値について分かり易く教えてくれました。
日常生活では決して出会えない世界観。高価なものが持つ美しさや格好良さ、作品を通して垣間見えるプロの心や姿勢は、将来の夢に向かって奔走する高校生にとって学ぶことが多かったですし、この時間が多忙の中にある束の間の休息だったので、純粋に嬉しく、好きな時間でした。
絵画、彫刻、陶器、建築、服飾…さまざまな分野の作品を師匠と対話しながら見て回りながら「本物」とは何かを教えてくれたのが、私にとっての東京 銀座です。
高校時代の記憶の断片。銀座界隈を歩きながらなぜ今思い浮かんだのか、回想しながら不思議に思いました。
考えてみて分かったことは、「本物」に触れながらたくさんの発見と感動を経験するようにして、美しいものを美しいと思う心をつくり、本物が本物だと分かる分別力を養うための時間だったのだなぁということ。将来やりたいことや希望、何が何でも願ったことを勝ち取りに行く力も本物に触れれば触れるほど得たように感じます。
最後にもうひとつ。17歳の自分が願ったことを思い出しました。
「いつか、エルメスのスカーフが似合う大人になりたい」
色んな現実の中でいつの間にか埋もれてしまったけれど、10代の期待と願いだけは必ず叶えてあげないといけないよなと、再び決心できたことに感謝して。
残り40日余りの2024年、心を燃やして走りたいものです。
心が善と悪、よいことと害になることを学んで分別してやるべきだ。だから学びなさい。
2024年11月20日水曜日の御言葉